IMG_3358
(写真:『揚輝荘』の象徴・山荘風の『聴松閣』)

名古屋の老舗デパート『松坂屋』
その創始者伊藤次郎左衛門祐民氏が
大正から昭和にかけ構築した別邸が
『揚輝荘』です

私が子供の頃は
もっと広大な敷地であったという覚えがあります

名古屋の高台にある一等地でもあるため
一部敷地が高級マンションなどに
取って代わられるなど開発が
進んだ時期があったのだとか

そのため、現在は、南園と北園に別れており
市の文化財として大切に保存展示がされております。

特に、象徴的な「聴松閣」は
各部屋に趣向が凝らされており
当時の建設様式を目の当たりにできる
大変興味深く貴重な建物なのでございます。

ご紹介したい箇所がたくさんありまして
今日はいつもより写真多めになります。

にほんブログ村 アウトドアブログ キャンプへにほんブログ村 釣りブログ 東海釣行記へにほんブログ村 バイクブログ バイク旅へ
☝同好の皆さんのブログが紹介されております

👇続く
IMG_3343
「揚輝荘」へは地下鉄東山線「覚王山駅」が最寄りの駅となります。

IMG_3344
覚王山といえば日本唯一の
仏舎利を収める寺院「日泰寺」で有名ですね
毎月21日には参道において「弘法様」と称した
「縁日」が開催されております。

IMG_3347
日泰寺の参道には


IMG_3345
様々なお店があり


IMG_3349
この界隈は、喫茶店やレストラン、お菓子屋さんが多く
ショッピングやグルメなど、楽しく過ごすことができると思います


IMG_3456
仏舎利を安置する超宗派のお寺「覚王山日泰寺」

IMG_3350
目的の「揚輝荘」は南園と北園に別れています

IMG_3352
まずは、「南園」へと行ってみましょう

IMG_3357
南園には山荘風の迎賓館「聴松閣」があります
入館料は300円です
北園は無料で観ることができます

「揚輝荘」の名は、ここ周辺が以前
「月見の名所」であったことから
※漢詩の一部
「春水満四澤 夏雲多奇峰 秋月《揚》明《輝》 冬嶺秀孤松」
から、とったものといわれています。

※漢詩:陶淵明の「四時歌」
春水満四澤(しゅんすいしたくにみつ)春の水は四方の沢に満ちあふれ
夏雲奇峰多(かうんきほうおおく)夏の雲は奇峰のように多く
秋月揚明輝(しゅうげつめいきをかかげ)秋の月は明るく光り輝き
冬嶺秀孤松(とうれいこしょうのひいず)冬の嶺には孤松がそびえる

IMG_3433
車寄せでは、次郎左衛門祐民が中国で
買い付けてきた南北朝時代の虎の石像がお出迎え



IMG_3361
車寄せの照明は、一枚の面のように漆喰塗りで仕上げられた天井となっています

IMG_3362
玄関の床は木を輪切りにして年輪を生かした
寄せ木敷き詰めの技法が使われています
先ほどの虎の石像が見えますね

IMG_3367
洋風の部屋に和風の明かり取りなど、
面白い試みが観られ退屈しません

IMG_3368
旧食堂
来賓が晩餐会を行った場所です
山荘風のインテリアとなっています

暖炉があり、床には暖房設備も設置されています

食事をしたあと、来賓は地下の舞踏室でダンスを踊り
お酒を酌み交わしたのだとか

現在、この部屋は喫茶室になっており
ゆっくりと過ごすことができます。


IMG_3370
サンルーム
採光面積を広くするために半八角形の出窓形状となっています


IMG_3371
食堂の壁には当主「いとう」の文字が

IMG_3372
食堂の暖炉


IMG_3373
暖炉の壁には有名寺院等の古代瓦がはめ込んであります
これは京都「東寺」のものですね。

IMG_3375
食堂の床は手斧(ちょうな)の「名栗技法」で
彫りを入れて仕上げられています
この建物の中の床はそれぞれの部屋で趣向を凝らし
全部屋異なる演出がされており
それだけでも面白い趣があります。


IMG_3377
居間の暖炉

IMG_3378
左右のタイルの目地は金箔で仕上げられています。
贅沢な作りですね


IMG_3380
この部屋の床の文様も変わっていますね
それぞれの部屋で異なっており興味深いです



IMG_3381
それでは2階に上がってみましょう

IMG_3382
階段の手摺には透かし彫りが施されています



IMG_3383
透かし彫り
当時は現在のような工具がなかったため
ノミで穴を空け、糸鋸で仕上げたと思われます


IMG_3412
1箇所だけ透かし彫りの模様が
反対向きになっている部分があります
探してみてください

これは、モノは完成してしまった時点から、
劣化が始まるため、故意に完璧は求めず
まだまだ、未完成なものとして
今後も発展・完成を目指す
という意味も込められているのではないかとのこと。

IMG_3387
2階の書斎
四隅にはステンドグラス調のガラス戸がついています
床は当時としては新しい素材であります
プラスチックタイルがはめ込まれています



IMG_3390
広々とした2階廊下ホール


IMG_3391
吹き抜け天井には手斧化粧を施された立派な照明があります
伊藤家の家紋の形になっているんですね
懐かしい松坂屋のマークでもあります


IMG_3396
暖炉のあるイギリス山荘風の客間
丸窓とソファーは一等船室のイメージなのだとか

次郎左衛門氏は仏教に信仰が篤く、
昭和9年には4ヶ月のインド等へ
仏跡巡拝旅行をしており
そのときに受けた 感銘を
聴松閣で再現したと言われています
インド・ヨーロッパ旅行の
思い出を再現した迎賓館なんですね





IMG_3400
中国様式の装飾が施された来客用寝室
床も中国風の雷文様
暖炉上の木鶏も中国様式ですね


IMG_3401
天井の鳳凰も中国装飾です


IMG_3403
サンルームの床は斜めに板が貼られています
斜めからの照明とあわせ
『斜』をテーマとした部屋なのだとか


IMG_3411
唯一の和室であった更衣室
来賓はここで「お召し替え」をしたのだとか

IMG_3408
旧トイレの跡
床には美しいタイルが貼られています


IMG_3413
さて次は舞踏会が行われた地下へ参ります


IMG_3415
舞踏会が行われる舞踏室には舞台も設けられています


IMG_3416
舞台室の舞台の扉は切戸口となって
屈んで出入りするようになっています
能や狂言で使用されたと考えられます



IMG_3419
舞踏室の暖炉の壁にはカンボジアのアンコールトムに見られる
踊り子のレリーフがはめられています

次郎左衛門はインド旅行の際
タイのバンコクからカンボジアまで足を伸ばしたといいます



IMG_3422
舞踏室の南側のガラスにはヒマラヤ連邦が描かれています
とても綺麗でしばらく見入ってしまいました



IMG_3424
舞踏室の脇には不思議な小部屋があります


IMG_3425
壁面には美しいタイルと
中心にはインド風の女神像がはめこまれています


IMG_3427
さらに地下からは、地下通路への階段があります
過去には長さ170メートルの地下トンネルがあり、
戦時中は防空壕の役目も果たしていたのだとか

なんのために作られたのか不明ですが
アジャンタ石窟寺院の写しとも言われています


IMG_3430
お釈迦様の誕生にまつわるシーンが描かれた壁画

すぐ隣の日本とタイの友好を象徴する日泰寺といい
アジア仏教との深い関わりを感じます

治郎座衛門祐民は財界人としてだけでなく
国際交流をはじめとする社会活動にも取組んでいました
そのため、揚輝荘は単、個人の別荘だけでなく
アジアの留学生の交流の場ともなっていたのであります。

さて、南園をあとにして
北園へと向かいます
IMG_3435
昔は大きな敷地でしたが、現在は南と北園は
細い通路でつながっています
マンションの住民の方の好意で往来できるようになっている
とのことですので住民のプライバシーを守るためにも
写真撮影は遠慮した方が良いですね
物音には注意を払って通行してくださいませ

IMG_3436
マンションへの入口横にある「北園入口」

IMG_3440
「伴華楼(ばんがろう)」
バンガローの洒落ですね
ここには、松坂屋関連の資料が展示されていました

IMG_3442
松坂屋の懐かしの家紋も
今日では大丸と合併してしまいましたね。

名古屋人にとっては、デパートといえば「松坂屋」
という時代もございました。

「オリエンタル中村」ってのもありましたね
「オリエンタル」の発音は名古屋弁の
「やめれ~せん(やめられない))」と同じ
抑揚でした。

IMG_3443
15代伊藤次郎左衛門の胸像

IMG_3445
「豊彦神社」


IMG_3448
中国風の「白雲橋」
天井には龍の絵が描かれています


IMG_3454
「揚輝荘(北園入口)」

それぞれの建物や部屋に
趣向が凝らされており
なかなか楽しい
近代建築めぐりが楽しめますよ

『あ〜面白かった!』